また寝てえドレス

目を閉じてくれたらいいものあげる。
言われて聡太は若干の下心と共に目を閉じた。
自分でもわかるくらい心臓が波打っている。
遠くで子供の声が聞こえる。木々がざわめく。
思いのほか大きな自分の鼻息に焦る。
なだめるようにゆっくりゆっくりと息を吐く。
落ち着け落ち着くんだ俺。
唾を飲む音がやけに大きく感じる。

どれくらい経っただろう。
もはや時間の感覚はない。
喋るなとは言われていないことを思い出し、
それでもこの幸運が失われないかと
恐る恐るとまどいながら声を絞り出す。
あの、まだかな?そう訊ねる声が上ずる。
あまりの恥ずかしさに顔が赤くなるのがわかる。
逸る気持ちとばつの悪さ。
相手の反応が気になって仕方がない。
うっすらと目を開けようとしては思いとどまる。

目を開けたくて堪らない。
それでもその度胸がない。
喉が渇く。頭がしびれる。
手も足も震えてきた気がする。

もしこれが冗談なら?
もしもう誰も居なかったら?
思わないようにしていた考えが頭をもたげる。
でもこれが本当なら?
僕の本気を試しているのだとしたら?

頭の中の天秤は希望に振れる。
聡太は信じることに決めた。
だって嘘ならそれまでだけれど、
本当ならチャンスを逃すことになる。
心のさざ波が凪いでゆく。
聡太は静かな心で待つことに決めた。
俺はもう迷わない。
ふっきれたように聡太ようやく笑みをこぼした。




後日、聡太が延々ともじもじしたりニヤニヤするだけの超大作動画がアップされた。





結局「いいもの」は手にはいったのですか?



冷や汗をかいたアイスコーヒーに目を落とし、
ゆっくりとだが力強い言葉で彼は語る。
手に、入りましたよ。
聡太はそう言って顔を上げた。

僕は素早い判断力を手に入れました。
どんなシチュエーションであっても、
待っている時点でもう負けなんです。
果報は寝て待てということわざがありますが、
あれはやれることを全てやった人の言葉です。
努力の結果、果報が来るのは予定調和なんです。
常に先手を取って状況をコントロールすること。
それが僕が手にいれた生き方です。


プロフェッショナルとは?



どんな状況からも学んで生かせる人ですかね。
貪欲さと言ってもいいかもしれません。



最後に、動画はどうなりましたか?


今もそのままですよ。
続編を自分で作って今こうしてユーチューバーになりました。