悩み無用っていい語呂だなあ

電車の車窓から看板が見える。
処方箋取り扱いと書いてある。
いや、処方箋取り扱いとだけ書いてある。
ビルの中程に大きな字で書いてある。
駅と駅の中程にある線路に面しているビルだ。

はて。なんの広告なのだろう。
もちろん薬局であることはわかる。
しかし広告にはターゲットがいるものだ。
一体誰に向かって訴求しているのだろう。
店名すらないこの広告はそれがわからない。

車窓から見る人には景色でしかなく、
周辺の人は見ることの無い看板。
仮に電車から見た人が気付くにしても、
わざわざ駅で降りるまい。
そもそも薬局の名前すらわからないのだ。

来客が増えるわけでもない。
知名度が上がるわけでもない。
無駄な自己主張と切って捨てることは簡単だ。
しかし何かに似ていないだろうか。
そう、君だ。

誰に見られるわけでもないのに、
妙にこだわって何回も着替える。
誰に好かれるわけでもないのに、
鏡の前で長時間格闘する。

宅配便を受けとるのに
ワックスつけてどうするのだ。
コンビニ行くのになぜ着替えるのだ。
そもそもなんで裏地がチェックなのだ。
なんなのだ。誰に対する自己主張なのだ。

君は看板だ。
見る人のいない看板だ。
見ても気にも止めない看板だ。
気に留めても意味を為さない看板だ。
ある人はそれをゴミだと言うだろう。

しかし案ずることはない。
私は気付いた。看板に気付いた。
そしてその意味を見いだそうとしている。

私は意味を見出すもの - sense seeker - である。 世に混乱を招く大いなるもの - gran magna - によって人心は今や蝕まれはじめた。一連の凶悪事件の裏では夜叉 - night demon - たちが糸を引いている。人の心を操り、世界 - eden - を崩落させようとしている。しかし今の世界は彼らに対抗する術を持たない。世界は救世主を求めている。そして元老院により私、意味を見いだすもの - sense seeker - は産み出された 。いま、私は君に意味を見出だした。君に世界の未来を見出だした。畏れるな。君の意味を信じよ。そして世界 - eden - を救ってほしい。

しかし今の君は無力だ。世に混乱を招く大いなるもの - gran magna - を打ち倒す力はまだない。君には過酷な試練が待ち受けている。今の「意味」を失ってしまうかもしれない。それでも試練を受ける覚悟はあるか?では全ての意味を失うところからはじめよう。まずはこの口座に全財産を振り込め。失うことで君は本当の意味に気付くだろう。臆するな、力なきものよ。崩落は一刻の猶予を待たない。さあ、急ぐのだ、救世主よ。





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